歯周外科・再生療法について

重度歯周病の場合には、歯周外科治療、再生治療を行う必要がある場合があります。また、インプラントを埋め込むためには、ある程度の骨量が必要となります。インプラント治療をご希望の患者様の中には歯周病で歯が抜けてしまい、歯槽骨の吸収が進んでしまっているという方もかなり多いです。そのため、歯周組織再生療法を行います。

外科治療と聞くと怖い・不安という思いから歯科医院への来院を後回しにされている方も多いようです。しかし現在は、歯科医療の進歩に伴い、さまざまな治療法があります。早めに処置することで自分の歯を守れる可能性も高まります。当院は、歯周外科・再生療法も得意としておりますので安心してご相談にいらしてください。

歯周外科の治療とは

歯周病の治療は大きく、歯周基本治療と歯周外科手術の2つに分かれます。歯周基本治療は、全ての歯周病患者さんに対して行わる治療です。歯周病の原因であるプラークや歯石を取り除き、患者さん自身が徹底的な歯磨きをすることで症状を改善します。軽度の症状には有効で、進行を抑えることができます。

図:歯周病の基本治療と外科治療

しかし、中等度から重度の場合は、歯周基本治療だけでは改善がむずかしく、深い歯周ポケットや複雑な歯槽骨の欠損が残ることがあります。その際には、歯周外科治療が行われます。歯周外科治療は主に3つのカテゴリにわけられます。

1.歯周外科治療(MWF・APFなど)

歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)で、これは生きた細菌の集まりです。そのため、歯周病を改善するにはこれらをしっかり取り除くことが必要です。歯周病の基本治療となるブラッシングやSRP(スケーリング・ルートプレーニング)だけでは、プラークや歯石を取り除けない場合があります。その際はMWF(ウィッドマン改良フラップ手術)や、APF(歯肉弁根尖側移動術)などの歯周外科治療へ進む場合があります。

また、骨などの歯周組織が減っている場合には歯周組織再生療法、歯ぐきが下がっている場合などには歯周形成術を行うことで改善されます。

2.歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、歯周組織となる歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨を再生させる方法です。歯周外科治療の際、歯槽骨の欠損の形態に応じて、歯周組織再生材料を併用したり応用することで再生を図ります。早い段階で歯周組織再生することによって、歯を失うリスクを防ぐことができたりします。また、歯を失った後でも、歯周組織再生療法によって歯槽骨などを再生することでインプラントやブリッジが可能となったりします。

3.歯周形成術

「歯ぐきがやせて歯が長く見える」「歯ぐきの色が悪い」といった症状に対して、歯周形成術で改善することができます。歯周形成術は、主に移植して歯ぐきを増やす術式となります。見た目の改善や、ブラッシングしやすい歯ぐきの形態にする、しみない歯ぐきにするなど機能面の改善を図ることもできます。

歯周外科治療について(MWF・APF)

歯周ポケットの除去、減少を目的によく行われる2つの外科的治療についてご紹介いたします。

MWF(ウィッドマン改良フラップ手術)

MWFは、歯周ポケットをクリーニングし、歯の根元周辺の組織を正常に修復することを目指しています。手術では、局所麻酔を使って歯肉を開いて歯周ポケットにアクセスし、歯根周辺の歯石や歯垢を丁寧に取り除きます。その後、歯周ポケットを浅く整え、歯肉を元の位置に戻して縫合します。

この手術は、歯周病によって進行した歯周ポケットの深さを減少させ、歯の根元周辺をクリーンに保つことで、歯周病の進行を防ぎ、歯と歯周組織の健康を促進することを目的としています。

APF(歯肉弁根尖側移動術)

APF法は、歯周ポケットを除去すると同時に、歯肉の位置を下げて角化歯肉を維持することが特徴です。歯肉を切り取って歯周ポケットを浅くするだけでは、切った分だけ角化歯肉(必要な硬い歯肉部分)まで失われてしまいます。

APF法より、歯周ポケットを浅くするだけでなく、角化歯肉を保持しながら歯周組織の増加を促進します。また、埋もれた歯を露出させることで、周辺に汚れなどがたまりにくくなり、歯ぐきへの細菌侵入を防ぐことが期待できます。

なお、歯周病の進行状況によっては、歯肉の中の骨が溶けている可能性もあります。その場合は歯周組織再生療法が骨を再生させる助けとなります。歯科技術や薬品は進化しています。病状によっては外科治療を行わずに済むケースもあります。まずは、早めに歯科医院で相談ください。

歯周組織再生療法

歯周組織となる歯肉・セメント質・歯根膜・歯槽骨を再生させる方法が、歯周組織再生療法となります。重度の歯周病の場合に行うことが多いですが、早い段階で歯周組織再生することによって、歯を失うリスクを防ぐことができたりします。

また、歯を失った後でも、歯周組織再生療法によって歯槽骨などを再生することでインプラントやブリッジが可能となったりします。当院では、次のようにさまざまな歯周組織再生療法を取り扱っており、皆様の歯を残すために必要な療法を必要なタイミングでご提案することが可能です。

骨や膜を再生する主な療法

療法 内容
GBR(骨誘導再生)法 再生させたい部位にメンブレンという膜を入れ確保したスペースに自家骨、もしくは骨補てん剤を注入し、再生を促す方法です。歯周病のせいで痩せてしまった骨を再生させるために行われる治療です。
エムドゲイン法 GBR法と同じく、歯周病のせいで失われてしまった歯周組織を再生させるために行われる治療です。歯ぐきを切開し、再生させたい部位に薬剤(エムドゲインゲル)を注入し、再生を促します。
APF(歯肉弁根尖側移動術)法 歯周病のせいで歯肉が失われ、歯周ポケットが深くなってしまった場合に行われる治療です。ただ歯肉を切り取って歯周ポケットを浅くするだけでは角化歯肉(必要な硬い歯肉部分)まで失われてしまうため、APF法で角化歯肉を維持しながら増加を促していきます。
CGF再生療法 CGF再生療法は、患者さんから採取した血液からフィブリンゲル(血液凝固に関わるタンパク質)をつくり、骨造成治療の際に使用することで、骨の再生を促進させる再生療法です。自己血液由来の材料で行う再生療法のため、拒絶反応や感染などのリスクを軽減できることが大きな特徴です。

歯ぐきを再生する主な療法

療法 内容
FGG(遊離歯肉移植法)法 角化歯肉(硬い歯肉)を上顎の口蓋から切り取り、必要な部分に移植という手術のことです。角化歯肉がないとブラッシングの際などに柔らかい歯肉部分が傷ついてやせてしまい、歯周病悪化の原因となるため、それを防ぐために行われます。
CTG(結合組織移植術)法 上顎の口蓋から結合組織を切り取り、歯肉がやせてしまった部分に移植することで歯根面を覆っている歯肉の厚みを増加させることが出来ます。歯肉の厚みがあることで、被せ物も自然でキレイに仕上げることができます。

歯周組織再生材料

現在、歯科医療の進歩により、歯周組織再生療法で使用する歯周組織再生材料はさまざまあります。保険適用となるものもございます。当院では患者さまの症状やさまざまなご状況にあわせてご提案いたします。

材料 内容
エムドゲイン エムドゲイン®は、歯周組織再生に役立つエナメルマトリックスタンパク質を含む材料です。
リグロス® リグロス®は、塩基性線維芽細胞増殖因子と呼ばれる成長因子で、人工的につくられたタンパク質となります。この成長因子の作用によって歯周組織の細胞を増殖させることで、失われた歯槽骨や歯根膜の再生が期待できます。※症例によっては保険適用となります。
バイオオス®
(Bio-Oss)
バイオオス®(Bio-Oss)は、骨移植材料です。歯周病による骨欠損部位に応用することで、骨再生の促進を期待します。
A-Oss A-OSSは、牛の骨を原材料とする歯科用移植材です。人の骨と最も似た多孔性構造を持っています。
バイオガイド® バイオガイド®は、吸収性のコラーゲン膜です。骨移植材と共に歯槽骨欠損部分に使用することで、骨再生の促進が期待されます。
e-PTFE膜 e-PTFEは、フッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレンを延伸加工した素材となります。体液は通過しますが細胞が通過しないため、骨再生誘導法や組織再生誘導法を行う際に、非吸収性膜として使用します。
CGF/AFG CGF(Concentrated Growth Factor)、AFG(Autologous Fibrinogen Glue)は、患者さんの血液を使用した再生療法材料です。これらは患者自身の100%血液由来による成分であるため、体がこれらを異物として認識せず、術後の回復が早まり、治療期間が短縮されることが期待されます。
  • CGFは人工的に作製されたフィブリンゲル(血液凝固に関わるタンパク質)で、ゲル状のものを「人工の膜」として使用します。これは骨造成治療において、骨の再生を促進するために使われます。
  • AFGは、フィブリンゲルが作製される前の血漿(血しょう)を指します。これは骨補填材に混ぜて「代用の骨」として使用されます。

CGF再生療法について

当院では、歯周病治療やインプラント治療、歯の抜歯等の外科処置において、術後の治癒促進の効果のあるCGF(Concentrated Growth Factor)再生療法を導入しております。骨が少ない・足りないためにインプラント治療を断念されていた患者さんを救うのが再生療法CGFと言えるでしょう。

CGF

CGFとは?

Concentrated Growth Factorsの略で、採血した血液から患者さんの血液由来のフィブリンゲル(血液凝固に関わるタンパク質)をつくり、骨造成治療の際に使用することで、骨の再生を促進させることができる再生療法です。自己血液由来の方法のため、拒絶反応や感染などのリスクを軽減できることがCGFの大きな特徴です。

メディフュージ

CGF最大のメリットは安全性

CGF再生療法に用いられる成分はご自身の血液から採取された成分です。そのため感染症リスクも低く安心です。患者さんの血液を採取して、血液を専用の遠心分離機を使用して、血中内にある組織の治癒や修復・再生を促進する働きを持つ成分を濃縮して取り出します。

それを骨補填剤と混ぜ合わせることで骨や歯茎の造成を図ることができます。ご自身の100%血液由来による成分であるため体も異物だと拒否反応を示すことなく、術後の直りも早くなるため治療期間の短縮が期待されます。

その他主な特徴

  • 一般的に使用する代用骨(牛や豚の骨)を使用せず、本人の血液を加工して作るため、安心
  • 添加物を入れず自分の血液のみで生成するので、アレルギーや感染のリスクが少なくなる
  • 傷の治りや骨の再生が促進されるため、治療期間が短縮される
  • 骨密度や顎の骨が少なく、インプラントができないと言われた方でも施術ができる

「骨が足りない」と他院で治療を断られた方へ

ブリッジやインプラントを埋め込むためには、ある程度の骨量が必要となります。日本人は顎の骨が薄く、少ない傾向がありますが、インプラント治療をご希望の患者様の中には歯周病で歯が抜けてしまい、歯槽骨の吸収が進んでしまっているという方もかなり多いです。そのため、そのままの状態ではインプラント治療が行えないというケースも少なくありません。

当院ではそのようなケースの場合でもインプラント治療が出来るように、人工骨を作り不足分を補う処置・骨造成手術や再生を促す治療として、ソケットリフト、サイナスリフト、GBR法、ソケットブリザベーションなども積極的に行っております。

症例に応じてより良い治療法を選択して対応いたします。そのため、他の病院でインプラントは出来ないと断られてしまった場合でも、当院でしたらインプラント治療が実現可能なケースがございます。まずは一度当院までお気軽にご相談ください。

歯周外科治療に関するご相談

歯周病は進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けていく病気です。そして最終的には抜け落ちて歯を失ってしまいます。しかし、初期段階では自分自身で自覚できるような症状は出てきません。歯ぐきの腫れを繰り返していたり、歯ぐきの出血がなかなか改善しない、歯がグラグラと揺れてきているなどの症状がある場合は、かなり歯周病が進行している可能性が高いです。

歯周病の治療では、まず歯周病になってしまった原因と現在の状態をしっかりと把握する必要があります。これは自己判断はできかねます。レントゲン、歯周精密検査、歯周病細菌検査などのさまざまな検査を行い、原因に応じた治療が必要となります。歯周病について心配な方、気になる症状がある方、お気軽にまずは歯科医院へご相談ください。